· 

手繰り寄せた老いたダイバーの記憶

あと数日でラマダンが始まろうとしている

この時期になると店はラマダンの準備に勤しむ

大きな銀の鍋や食器類が所狭しと並んでいる

 

この大事な時期に迎えたこの調査は

わたしにとって最も重要なものだ

それは

 

ムシャ島における淡水の存在を示す手掛かり

そう 海底地下湧水の採取だ

この情報を私たちに与えてくれたのは

ジブチ居住歴28年のフランス人のダイバー

ジョン・ミシェルだ

 

彼にとってジブチの海は庭のようなもので

どこに何があるか熟知している

そんな彼からの情報を疑う余地はなく

水深30m地点で静かに湧き上がる水を求め

またムシャ島へと向かったのであった

水深30mでは作業時間が制限される

今回私たちに与えられた時間は10分間

場所の確認と採取手順の練習を経て

いよいよ本番へと突入した

 

ダイブ中に指示を出すのはもちろんジョン

彼のその豊富な経験が私たちを導く

研究者ではないが

数多くの調査に参加しているおかげで

物の仕組みや手順への理解度が桁違いだ

 

そんな彼の監督のもとで行うサンプリングが

失敗するはずもなく

湧水らしきものを採取することが出来た

 

らしきもの と言ったのは

今回実際に目湧水の確認できなかったからだ

しかしイブラヒムニキ曰く

明らかに海水とは違う温度を感じたらしい

 

日本に持ち帰ったのち各種分析をしてみよう

結果が待ち遠しいがまだもう少し辛抱だ

ちなみに

 

ダイビングライセンスがないわたしは

ずっと船でお留守番。

引き伸ばしにしてきた免許取得に

帰国後すぐにとりりかかろうと決意した